May 21, 2006

映画「ダ・ヴィンチ・コード」を観る

ダ・ 映画「ダ・ヴィンチ・コード」を、公開初日、夕方六時四十五分からの回を観に行ってきた。
 原作があまりにも有名だし、今回は回りくどいあらすじ紹介はなしで、さくさく行きます。

 僕の感想としては、まあまあそこそこ楽しめたかな、という感じだった。
 もともとの小説ファンとしては、やはり若干消化不良気味、という感じはいかんともしがたい。

 パンフに掲載されているインタビューでトム・ハンクス本人が述べているように、小説「ダ・ヴィンチ・コード」のその大きな魅力は、なんといってもその知的な探求、知的な冒険の面白さ、といった側面に負う所が大きい。

ダ・ヴィンチ「映画化するのはとても難しかったよ。僕やロン、アキヴァは、まるで困難な手術を行うような気持ちで映画化に挑んだよ」

 「ダ・ヴィンチ・コード」の面白さは、やはり小説ならではの面白さである。じっくりと細部まで掘り下げ、その歴史の舞台裏や因果について、「ふんふん」と興味深く時間をかけて読み進んでいく面白さ。読者の知的好奇心を満足させてくれるし、それらの連関が精密に謎解きに結びついてこそ、「ダ・ヴィンチ・コード」の真髄である。単純にミステリやサスペンス小説とくくってしまうと、もっと出来のいいよく出来た小説は他にいくらでもある、ということになる。
 そういったこの小説ならではの面白さを、時間的制約の厳しい映画の中で見せていくのは、そもそも最初から、ほとんど不可能に近い試みだったと言える知れない。それは昔「ジュラシックパーク」に感じたことでもあった。

03ダ・ヴィンチ 膨大な歴史的、知的記述と同時に、そこから生まれる人類の魂の歴史への考察、ある種の哲学的洞察や真理への探求、といった面が、小説に深みと、なんともいえない魅力を与えているはずなのだが、そういった原作にとって一番大切なはずのものがごっそりと抜け落ちてしまう。

 映画では、全体的にどうしても、駆け足のダイジェスト版という感じになってしまった。謎解きの面白さもほとんど感じられなかった。シオン修道会やダ・ヴィンチや、キリスト教の歴史についての話は、ただの説明ゼリフになってしまったように思う。
 小説のほうが、はるかに面白かったというのが、率直な感想だった。

08ダ・ヴィンチ 実際、”映画”そのものとしての出来はどうなのか、という点では、なかなか判断しづらかった。
 小説と映画は、そもそも別物であって当然だし、そういう意味で、小説と映画を比較しすぎるのはフェアではないかも知れない。
 では、一本の”映画”としての出来はどうなのか?

 そう考えてみたが、しかしやはり、原作を良く知っている以上、公平な判断は難しい。
 そこに描かれない部分についても、こちらとしてはすでに”知っている”し、描かれない部分についても思い出したり、頭に浮かんだりして、理解できてしまう。
 一つの物語として、何が描かれるべきで、何はすっとばしてもかまわなかったのか、というのは、原作を読まずに今回の映画を見た人の感想が一番の判断材料になると思う。

011ダ・ヴィンチ 僕としては、特にフラッシュバックの使い方などが、果たして原作を知らない人がこれを理解できるだろうか、と首を傾げた部分だった。その挿入の仕方にしても、ちょっと安易というか、とってつけたような感じがした。シラスの過去や、アリンガローサとの出会いのエピソードなど、たぶんあれではほとんど意味がわからないと思う。
 シオン修道会、アリンガローサ司教、シラス、導師の関係も、よく理解できなかったのではないだろうかと思う。
 
 映画として、とにかく物語を展開させていかなくてはならない、という命題がまず第一で、そのために、一つ一つの謎も、謎というほどのこともなくいとも簡単にあっさりと片づけられていってしまう。
 チューリッヒの銀行であっさりと金庫を開けるシーンには、いささか愕然とした。
 ちょっとちょっと、そりゃないんじゃないの、という感じだった。
 銀行支配人の登退場とその行動も、一個のキャラクターとしてはお粗末過ぎるというか、物語の一つの重要なピースをしめる人物としては、いささか意味不明すぎる気がする。
 いきなり「逃げてください」と言われ、次の瞬間いきなり銃を突きつけられるというのが、意外性うんぬんの前に脈絡がなさすぎるように思った。

010ダ・ヴィンチ ちょっと否定的なことばかり書いたけれど、トム・ハンクスとオドレイ・トトゥ、ジャン・レノといった俳優陣は悪くなかった。
 もともと僕はトム・ハンクスは素晴らしい俳優だと思っているし、やっぱりうまいよなあと今回も思った。
 眉間にしわをよせた彼の困ったような顔と広いおデコが、僕は個人的に好きである。
 また、実際のルーブル美術館でロケをしている点や、数々の絵画、建物や教会など、小説で「ダ・ヴィンチ・コード」に親しんだ人にとっては、映像的には観るべきものはあったと思う。それから真犯人がつかまったあとの、エピローグ的なエピソードの描写は、悪くなかった。実際、この結末に至るシーンを描くために(けっこう長い)、それまでの内容が薄いものになってしまったのではないかいう気がする。

 いずれにしても、原作ファンにとっては、とりあえずこの映画は見ずにはいられないだろうし(僕もそうだったように)、まあそこそこには楽しめると思うので、まあ、観てみて下さい。


P.S
 いつも思うのだけど、こういう宗教的な題材を扱った映画の場合、必ず激しい論争が起きますね。
 旧ソ連のキリスト教圏では一斉に上映反対の抗議行動が起きたということだし、ロシア正教徒が抗議集会を開き、映画のポスターを燃やして鑑賞しないよう呼び掛けたり、モスクワ司教は「福音の歴史を侮辱し、ゆがめた映画の公開は遺憾」とする声明を出したということである。
 ベラルーシの首都ミンスクのカトリック教会司祭は上映反対のハンストを開始し、ウクライナのキリスト教団体は、抗議の十字架行進を行ったということだ。

002ダ・ヴィンチ「パッション」はもちろんそうだったし、「ナルニア国物語」でも、いろいろと論争が起きた。

 まあまあ、これはフィクションなんだからさ、面白ければいいじゃん、と僕を含めた多くの日本人は思うわけだけれど、国によってはそうもいかないみたいである。
 それは宗教が彼らにとって生活の根幹をなす重要なものであるからだろうし、普段特別信心深いというほどではなくても、キリスト教が日常的な基盤として機能している社会にとっては、これは子供の教育に重大な影響を及ぼす問題である、
と考えたりするのだろう。
 そりゃたしかに、あまりにも宗教に対して無関心な日本人が悪いのかも知れないけどね。

 しかしそれに対して、トム・ハンクスはあっさりと述べている。
 「この本が物議をかもしたことも、この本に反感をもつ人がいることも、知っているさ。でも、そういう人はこの映画を観に来なきゃいいんだよ」

●過去の記事 → 「ダ・ヴィンチ・コード 愛蔵版」を読む


人気blogランキング。よろしかったら、クリックをお願いします。


012-2ダ・ヴィンチ

 













■「ダ・ヴィンチ・コード」、ダン・ブラウン関連

ダ・ヴィンチ・コード ヴィジュアル愛蔵版

絵画とともに、謎を解く旅へ−

読んだ人にもこれから読む人にもうれしい、豪華愛蔵版!内容に登場する絵画や紋章、地図や写真など140点をふんだんに盛り込みました。小説の世界により深く接するための豪華カラー版。

4,725円(税込)

ダ・ヴィンチ・コードの謎(DVD)

サイモン・コックスによる世界的ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」に記された“キリスト教の消された歴史”は真実なのか?レオナルド・ダ・ヴィンチの絵に隠されたさまざまな謎を、映像や解説で紐解くドキュメント。

3,500円(税込)

ダ・ヴィンチ・コードの謎を解く 世界的ベストセラーの知的冒険ガイド

『ダ・ヴィンチ・コード』で提示された謎を66のキーワードで読み解く。本書は、欧米の各書店で『ダ・ヴィンチ・コード』と併売され、ノンフィクション部門のベストセラーとなっている一冊。

1,470円(税込)


ダ・ヴィンチ・コードの「真実」―本格的解読書決定版

ダ・ヴィンチはなぜ暗号を使ったのか?マグダラのマリアは一体何者なのか?秘密結社は何を行ってきたのか?そして聖杯とは…?謎が謎を呼ぶ『ダ・ヴィンチ・コード』の世界。「真実」か「虚構」か?時代を超えた「最大級のミステリー」に挑む!!

1,680円(税込)

ダ・ヴィンチの暗号を解読する―図説ダ・ヴィンチ・コード



1,470円(税込)

 ダン・ブラウンの本

 

 


 



トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. ダ・ヴィンチ・コード  [ yuringさん ]   May 22, 2006 18:42
いよいよ ダ・ヴィンチ・コード 公開ですね!! 『ダ・ヴィンチ・コード』特
2. 映画版ダヴィンチコード  [ 裏:枕草履 ]   May 22, 2006 19:30
原作も読んだけど、映画のダ・ヴィンチ・コードも見に行ってきました。 うーむ・・その筋への配慮がアリアリ(笑) 原作では「文書・儀式等はすべて事実」と言い切ってるのに、スタッフロールでは 「これはフィクション」と断ってるし、ティービング邸ではラングドン...
3. 批判されちゃったダ・ヴィンチ・コード  [ まいど、blog始めました ]   May 22, 2006 22:54
「ダ・ヴィンチ・コード」公開直前… 教会から非難の嵐  伊、比ではボイコット呼び掛けも よほど注目を集めていると見える。 どんなとんでもないストーリーでも、注目されなかったら何も言われない。 大したことない飛躍でも、注目されれば問題になる。 てゆうか教会って...
4. 晴耕雨読・ダ・ヴィンチ・コード  [ 獏の食わず嫌い ]   May 22, 2006 23:52
ダ・ヴィンチ・コード読了しました。 結構凄い勢いで読んでしまいました(あ〜クラクラする)。 多くを語るとこれから映画を見る人もいると思うので、アレなんですが、美術史を知らない人でも充分面白いでしょうね。 でも知ってると知らないとじゃ知ってるほうがいいに決ま...
5. 映画ダ・ヴィンチ・コードの感想(まとめ)  [ 叡智の禁書図書館 ]   May 23, 2006 00:24
映画を観終わって、すぐに携帯からも書き込みしてみたんですが・・・。 改めていうと心配は杞憂に終わり、十分に楽しめました♪ ただ、原作を越えるものではなく、本を読まずに見たのではおそらくシーンの一場面一場面が何を表しているのか、完全に理解できないと思います....
6. ダン・ブラウン【ダ・ヴィンチ・コード (上・下)】   [ ぱんどら日記 ]   May 23, 2006 18:48
3 「はやりもの」は買わないと決めている私です。 が、テレビでレオナルド・ダ・ヴィンチに関する特番を見てしまいまして……それがヤケに面白くて、やはり本を買わねば、と思ったしだいです。 さっそく読んでみましたが、ん〜、やっぱり面白いですね。 ラングドン....
7. ダ・ヴィンチ・コードを観る前に(パート2)  [ 無料レポート・小冊子バンク 無料で情報ゲット! ]   May 23, 2006 23:25
ダ・ヴィンチ・コードの特番観ました? それともすでに映画観ちゃいましたか? 「ダ・ヴィンチコード」をより良く・深く楽しむためには、 重要なポイントを抑えておかなければいけません。 重要なポイント。それは「M」――マグダラのマリア。 作品をより深く楽しむために...
8. ブログを休んで「ダ・ヴィンチ・コード」にハマル  [ 毎日が日曜日blog2 ]   May 30, 2006 22:50
タイトルどおり。今週は会議もあったり、その準備があったり、仕事と別のこととが重...

この記事へのコメント

1. Posted by yuring   May 22, 2006 18:48
TBありがとうございました。
あの奥深い内容を映画として短時間にまとめてしまうと、原作のような細かい描写が欠けてしまいますね。
映画を観てから原作本を読むのが一番楽しめるのかもしれないですね。
2. Posted by ヒデちゃん   May 22, 2006 21:56
yuringさん、こんばんわ。
書かれている内容が特殊で濃いだけに、アクションやスリルでひっぱっていくのが身上であるエンターテイメント映画としては、やはり難しいものがありますね。
先に映画を見ていたら、僕はたぶん・・・原作を読む気にはならなかったと思います。
3. Posted by pianocraft   May 30, 2006 22:56
TB有難うございました。
私は、映画はまだ観ていません。けれど、記事を読ませてもらって、きっと同じようなことを思うのだろうと思います。先日も「ナイロビの蜂」で原作先行で、映画後の順番で後悔しましたから・・・・

どうしても細部を知りすぎてから、映画でざっくりやられると不満が残ります。「ロード・オブ・ザ・リング」も確かそうでした。長い原作を読んでしまって、2部3部を観たらもう少し描いてほしかった・・と感じて。でも、あれは映画として好きですけど。何度も観れるし。
ヴィゴも大好きだし・・・。

でも映画は観ると思います。ダ・ビンチで楽しませてもらったから、これはこれでいいとして、仕上げに映画もみなきゃといった感じですか。
4. Posted by ヒデちゃん   May 31, 2006 07:44
pianocraftさん、こんにちわ。
そうですね、原作を先に読んだ場合、たいていは映画に不満が残ってしまいますね。
小説の映画化で成功している作品というのは、やはり少ないと思います。「プライドと偏見」あたりは、そこそこ成功してるとは思うんですが。すごく古いですけど、「風と共に去りぬ」は大成功でしたね。

 映画、是非ご覧になってください。
 やはり見なくちゃおさまらないです。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔